雨上がりの夜空は

「あ、本当だ~。じゃあね~紗也(さや)ばいば~い」

「ばいば~い!華菜(かな)また明日学校でね~!」

塾が終わったら、私以外のみんなはいつも塾の入口前の小さな駐輪スペースで、親の送迎組の車が着くまで溜まっておしゃべり。
だけど冬の夜の外は防寒をしていても当然のことながら寒くて、とてもじゃないが駐輪スペースを溜まり場に、迎えの車が着くまでおしゃべりなんてしていられない。



塾長の井出先生が、小さな古民家を借りて開いた学習塾に通うのは、5人の中学一年生。
5人全員が同じ中学校に通っているから、クラスはそれぞれ違えど平日は毎日学校で顔を合わせ、その中でも週に2日は放課後の塾でも顔を合わせる。

男子は元気が取り柄なムードメーカーの晃臣(あきおみ)と、晃臣と同じテニス部に所属している悠馬(ゆうま)君の2人。

女子は音楽とオシャレが大好きな華菜ちゃんと、華菜ちゃんと同じクラスで同じ合唱部に所属している紗也ちゃん。
そして華菜ちゃんと紗也ちゃんの2人と同じクラスだけど、クラスの中でも地味で目立たない私…真村雪穂(まむら ゆきほ)の3人。

この5人が週に2日、放課後に井出先生の塾に通っているメンバー。

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