雨上がりの夜空は
「ねぇ、雪穂」
不意に悠馬くんに呼び止められ、歩き出した足を止めた。
悠馬くんに“雪穂”って名前で呼ばれたのも、呼び止められたのも初めてだった。
今までほとんどと話したこともないのに。
「えっ?何、どうしたの?悠馬くん」
悠馬くんが歩きながら私に近づいてくる。
「あのさ、雪穂っていつも歩きで塾通っているの?」
「あぁ…、うん。
そうだね、すぐ近くだし自転車で行く時もあるけど、普通に歩いても行けるから最近はほとんど歩きだね」
「ふーん…そっか…」
なんて言って悠馬くんは私の隣に並ぶ。
そして次に思いがけないことを口にした。
「家までとは言わないけど、途中まで送るから…歩こう?」
「えっ…?悠馬くん、お迎えは?
ここでお母さん来るまで待っててなくていいの?」