雨上がりの夜空は
「うん。俺の方は大丈夫だから 、行こうよ」
「あ…うん。じゃあ…」
そして2人並んで歩き始めた。
だんだん塾から遠のいていく。
「寒いね…」
「うん。すごく寒いね」
お互い他愛もない会話だけ交わして冬の夜道を歩いていく。
ほとんど話したことがない同級生の男の子と2人で並んで歩いているという状況に、緊張で跳ね上がる自分の心臓の音だけしか聞こえない。
チラッと隣を見れば、真っ直ぐ正面を向いて歩く悠馬くんの姿。
今のこの場が昼間の学校だったら絶対他の同級生達に目撃されて「お前ら付き合ってるの?」って確実に冷やかされる。
…でも、何で急に一緒に帰ろうなんて言ってくれたんだろう?
ほとんど話したこともないのに…。
そんな疑問を抱えたまま、冬の夜空の下を歩いていく。
歩く度に道路脇の街灯が2人を照らし、並んで歩く2人の影を長く伸ばしていった。