【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい～俺様御曹司と甘く危険な政略結婚～

もしかしたら父が生きていて、ひょっこり現れるかもしれない。
自宅の門の前には『立入禁止』と書かれた黄色いテープが張られていた。
中は見るも無残な焼け跡が残っているだけ。
蘇る火事の時の記憶。
赤黒い炎。
皮膚を焦がすような熱い空気。
あの時の恐怖の感覚を思い出して震えた。
もう治ったはずの足の火傷の傷もズキッと痛む。
父の姿はない。
やはりあの火事で亡くなってしまったのだろうか？
……来るんじゃなかった。
真っ直ぐ氷堂のマンションに帰ればよかった。
自分の肩を抱き、踵を返してもと来た道を戻ろうとしたら、いきなり誰かに口を押さえられた。
「……だ、誰？　放して！」
手足をバタバタさせて激しく暴れるも、近くに停めてあったワンボックスの車に乗せられた。
「やあ、綾香ちゃん、君がひとりになるのを待っていたよ」
秋人さんが中にいて、ダークな笑みを浮かべる。
「……あ、秋人さん、これはどういうことですの！」
両手を振り回して抵抗しながら彼を咎めたが、すぐに彼の部下らしき男に両手を押さえつけられた。
「君も火事で死んでくれればこんな面倒なことにはならなかったんだがな」