【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい～俺様御曹司と甘く危険な政略結婚～

８、無事でいてくれ

《やあ、綾香ちゃん、君がひとりになるのを待っていたよ》
綾香からの応答はなかったが、ガサゴソと物音がした後、花山院秋人の声がスマホから聞こえて、顔が強張った。
《……あ、秋人さん、これはどういうことですの！》
すぐに綾香の声がしたのだが、何かの衝撃でブチッと電話が切れる。
多分、この通話はたまたま綾香がスマホのボタンを押して俺に繋がったものなのだろう。
「……綾香が秋人に捕まった」
きっと、今日会社に綾香宛に電話をかけてきたのも、このタイミングだと秋人に違いない。
すぐにＧＰＳで彼女の居場所を探ろうとしたら、スマホがブルブルと震え、藤原から電話がかかってきた。
絢香のことでかけてきたな。
直感的にそう思う。
スマホの通話ボタンに指で触れると、すぐに彼の声がした。
《氷堂、綾香ちゃんが車に連れ込まれて、そのままさらわれた。僕と剣持さんでその車を追跡してる》
スマホを耳に当て藤原の声に耳を澄ますが、緊迫した状況が伝わって来た。
綾香を連れ去ったのは、先程の電話の内容からすると多分秋人だろう。
「今、どの辺にいるんだ？」
どうしてこういう事態になったかは聞かずに、今いる場所を藤原に確認すると、彼は切迫した声で告げた。