【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい～俺様御曹司と甘く危険な政略結婚～

病院のパジャマに着替えた俺は、そのまま彼女に付き添った。
ちらりと壁時計に目を向ければ、時刻は午後十一時を回っている。
綾香の手を握って彼女の寝顔を見守った。
検査の結果、幸い血中の酸素濃度の数値に異常はみられなかった。
海水も大量に飲み込んではいなかったようでホッとする。
自分が溺れた方がまだましだ。
こんな死にそうな思いをするなら、彼女を籠に閉じ込めてしまいたい。
それは、俺の自分勝手な願望。
だが、現実にそんなことを出来ないのはわかっている。
綾香を籠の鳥にしてしまったら、彼女が可哀想だ。
「どうしたら無茶をしないでくれる？」
眠っている綾香に問うが、彼女が答えるはずもなく、俺の声が暗い病室に虚しく響くだけ。
無鉄砲なのが綾香で、そんな彼女を俺は好きになった。
「俺が命に代えても守ればいい」
自分の心にそう誓った。

☆

三十分程経った頃、控え目なノックの音がして、親父と大谷さんが病室に入って来た。
「綾香さんの具合は？」
親父がベッドの近くまで来て、彼女の顔を覗き込む。