【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい~俺様御曹司と甘く危険な政略結婚~
「氷堂さまはこまめに綾香さんのことで連絡をくれたんですよ。その髪、似合ってますね」
ニコッと笑ってみせる桃華さんの発言に驚いた。
氷堂が桃華さんとコンタクトをとっていたなんて全然知らなかった。
「ありがとう」
私も微笑み返して、彼女の頬の涙を拭う。
なにもかも失ってしまったから……もうお嬢さまではなくなってしまったから、桃華さんのことを避けていた。
でも、私が間違っていたわ。
少し反省している私に美佳は厳しい口調で注意する。
「お嬢さま、秋人さんがいつ襲ってくるかわかりません。くれぐれもひとりで行動されませんように」
氷堂と同じことを言うのね。
父がいなくなって、私はひとりになったと思っていた。
だけど、こうして心配してくれる人がいる。
私は……ひとりじゃない。
「わかっているわ」
笑みを零して返答すれば、彼女は疑い深く目を細めた。
「本当にわかってますか?勝手に行動したら、その時は氷堂さまにお仕置きしてもらいますからね」
「それは遠慮したいわ。なんだか怖いもの」
氷堂の名前が出てきて苦笑いした。
それから三十分ほど雑談をしてふたりが帰ると、氷堂が戻って来た。
「楽しめた?」
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