【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい~俺様御曹司と甘く危険な政略結婚~
11、理性のタガが外れる
「高速鉄道の受注はうちが取れます……コホッ……か?」
会議で担当幹部に確認するが、咳が出て上手く喋れなかった。
綾香が退院した次の日、いつもの生活に戻ったものの、朝起きた時から喉がイガイガする。
どうやら風邪らしい。
ここ数年風邪を引いたことはなかったんだがな。
会議の後半はただひたすら水を飲んで喉の痛みに耐えていたと思う。
会議もあまり集中出来なかった。
「風邪辛そうだね。今日はもう帰ったら?」
会議が終わると、隣に座っていた大谷さんが気遣わしげに声をかけた。
「ええ。そうします」
苦笑いしながら席を立ち、自分のオフィスにビジネスバッグを取りに行って、海外戦略室に寄る。
「綾香、そろそろ帰ろう。コホッコホッ」
彼女に声をかけるが、やはり咳が出る。
よりによってこんな時に風邪を引くなんて……。
秋人はまだ捕まっていないのにな。
綾香と一緒に氷堂家の車で帰るが、出勤時と帰宅時のこの時間が一番緊張する。
警護は厳重だが、いつ秋人が現れるかわからない。
体調も悪いせいかいつもの余裕がなくて、車の後部座席に座りながらもピリピリしていた。
そんな俺の緊張が伝わったのか、綾香はぎこちない様子で座っている。
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