【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい~俺様御曹司と甘く危険な政略結婚~
彼女の温もりに無事だったんだと実感する。
それからしばらく俺も綾香も何も言わずに抱き合っていたが、ふと彼女の首の傷のことを思い出した。
そう言えば、血が……⁉︎。
「痛い?」
ズボンのポケットからハンカチを取り出して、綾香の首の傷にそっと当てる。
見た感じ傷は浅く、少し傷がついた程度。
「平気です。ナイフが当たってちょっと切れただけですわ」
彼女は俺を安心させるように笑って見せるが、その答えを聞いて平静ではいられなかった。
どんなに怖かっただろう。
一度ならず二度までも秋人は彼女を苦しめた。
まだ警察に引き渡していないが、あんな男極刑にしてほしい。と言っても、死刑にはならないだろう。
刑務所から出てきたら社会的に抹殺してやる。
数メートル先でのびている秋人を憎らしげに見ていたら、綾香が俺を見上げて言った。
「いつだって私がピンチの時には蒼士が助けてくれますのね。秋人さんに襲われた時、あなたの顔が浮かびましたの」
彼女の言葉にどす黒い感情に支配されていた俺の気持ちがふわっと和らいだ。
多分先月なら絶対に綾香の口からそんな発言は聞けなかったに違いない。
「俺の努力がようやく報われたみたいだな」
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