【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい~俺様御曹司と甘く危険な政略結婚~
それを何度繰り返したのか。
だが、それは綾香に必要なことで、俺はずっと彼女を抱き締めていた。
三十分ほど経っただろうか。
綾香が「もう大丈夫」と目元を手で拭いながら顔を上げて俺を見つめる。
俺は涙で潤んだその目を見つめ返した。
「本当に? 俺の前で無理しなくていいんだよ」
もっと俺に甘えればいい。
そしたら、とことん甘やかす。
「無理はしてませんわ」
ニコッと笑って彼女は俺の抱擁を解こうとする。
俺の気のせいだろうか?
なんだか綾香に距離を置かれた気がした。
今朝は彼女と抱き合ったし、秋人から助けた時も互いの気持ちが通じ合ったと思ったのに、どうして?
決して自慢ではないが、高校の時からずっと綾香のことを見てきたせいか、彼女の心情を読み取ることには長けている。
綾香の表情や仕草で今の彼女の気持ちがわかるのだ。
「それは、残念。俺はずっと一日中でも綾香を抱いて慰めていたかったのにな」
わざと軽口を叩いて綾香の反応を試せば、彼女はひどく傷ついた顔で声を荒らげた。
「そんなの嘘ですわ!」
意外な言葉が返ってきて目をパチクリさせる俺。
「何……嘘って?」
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