【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい~俺様御曹司と甘く危険な政略結婚~
なるだけ感情的にならないよう、穏やかに聞き返すと、綾香はまたわっと泣き出した。
「あなたには私以外にも愛人がいるじゃありませんか」
彼女の返答に一瞬思考が停止して、変な声が出た。
「は?」
『愛人』?
この俺に?
イギリスにいた時はかなり女遊びが激しかったが、綾香を好きになってからは彼女以外の女性と親しくなったことはない。
「綾香……どうして俺に愛人がいるって思うの? 大学の卒業式の時にも俺は愛人は作らないって言ったはずだけど」
気を取り直して確かめると、彼女は真っ赤になった目で俺を見た。
「だって……私が海で溺れて入院した日、蒼士は午後の予定をキャンセルしたじゃないですか。仕事よりも重要なことって愛人しかありえませんわ!」
勢いに任せてまくし立てる綾香。
なぜ……そういう思考になる。俺ってどれだけ信用ないんだ。
頭痛がしそうになったが、彼女の誤解をちゃんと解かないと俺から離れていってしまう。
「綾香」
嗚咽を漏らして泣く彼女の顎を掴んで、真っ直ぐにその目を見る。
「いい? はっきり言っておくけど、神に誓って俺に愛人はいないから」
「でも……!?」
反論しようとする綾香の唇に指を当てた。
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