【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい～俺様御曹司と甘く危険な政略結婚～

フフッと笑みを浮かべて追及すれば、父は申し訳なさそうに謝った。
「……すまん。最近、秋人がいろいろ問題を起こしてなあ」
父の説明に顔をしかめる。
「そう言えば、私の卒業式の日も秋人さん来てましたね。また、お金ですか？」
「そんなところだ」
父は眉根を寄せて答えるが、お金の他にも何かありそうな口ぶりだった。
「本当に困った人」
父に同情するように呟く。
私が男に生まれていたら、父もこんなに苦労することはなかったかもしれない。
うちには男の子がいないから、父の甥である秋人さんが跡を継ぐ。
でも、彼は素行に問題があるし、いい経営者にはなれないと思う。
「秋人のことは心配しなくていい。卒業旅行、楽しんできなさい」
父が優しく微笑むと、私もフフッと笑みを零した。
「ええ。たくさんお土産買ってきますね」
それから、食事を終えて自分の部屋に籠もり、スーツケースを取り出して洋服や化粧品を詰めていく。
すると、コンコンとノックの音がした。
「はい」と返事をすれば、ワンピース型の紺の制服を着た女性が入ってくる。
「綾香お嬢さま、こちらのお薬もお忘れなく」
箱に入った薬を手渡すのは、橋本美佳、二十四歳。