【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい~俺様御曹司と甘く危険な政略結婚~
会社でだけじゃない。
花山院家で雇っていた人たちも今、氷堂家でお世話になっているらしい。
燃えてしまった屋敷は、現在再建中。
退院後の父の生活も考えて、バリアフリーの設計にしてもらっている。
そういう指示も全部彼がしてくれた。
昔は計算で動く人かと思ったけど、そうじゃない。
彼はいつだって私のために尽くしてくれる。
父へのお見舞いにだって毎週ついて来てくれて、医師の報告も聞き、今後の手術やリハビリについての相談に乗ってくれる。
いや、彼が私の代わりに判断してくれているといっていい。
彼の存在がなかったら、私はきっと今後のことで悩んで倒れていたかも。
私はそんな蒼士のために何が出来るだろう。
「はい、綾香ちゃん、シャンパン」
藤原にグラスを差し出されハッとする。
「あ、ありがとう」
ぎこちなく礼を言って受け取れば、彼はじっと私の顔を見た。
「最近残業続きで疲れちゃった?」
「いいえ、そういうことではありませんの。ちょっと考え事をしてて……」
藤原から視線を外して返せば、彼は穏やかな声で聞いてきた。
「考え事って氷堂のこと?」
言い当てられてドキッとする。
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