【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい～俺様御曹司と甘く危険な政略結婚～

「いや、社長から。まだ仕事してるんなら、さっさと帰って綾香と過ごせって」
きっと蒼士を心配してメールしてきたのだろう。
「社長優しいですわね」
笑みを溢して言えば、彼は私の頬に不意に触れた。
「綾香にはね。ありがとう。綾香のお陰で結構疲れが取れたよ」
「それはよかったですわ」
「イブなのにどこも連れて行ってあげられなくて……!?」
申し訳なさそうな顔をする彼の唇に指を当てる。
「謝らないでください。こうしてふたりでいられるだけで充分幸せですわ」
蒼士の目を見つめて微笑むと、彼のチェック柄のネクタイを外し、自分のポケットに忍ばせておいたストライプのネクタイをかけた。
「ええ……と、これ……どうやって結ぶのかしら？」
そう言えば、ネクタイなんて締めたことがなかった。
締め方をネットで確認するんだったわ。
ネクタイをじっと見据えながら反省する私を見て、彼が優しく指導する。
「そこに通して、ギュッとして」
「こうですの？」
蒼士の目を見ながら確認してネクタイを締めたのはいいが、なんだか不格好。
「ネクタイ締めるのって意外に難しいんですのね。蒼士みたいにうまくできない」
ちょっとがっかりして言えば、蒼士は穏やかな声で私を慰めた。