【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい~俺様御曹司と甘く危険な政略結婚~
4、俺の愛しの婚約者
「俺は婚約解消した覚えはないよ」
綾香にはっきりと告げれば、彼女はその綺麗な漆黒の目を大きく見開いた。
「だって、私の手紙を大谷さんから受け取りましたでしょう?」
彼女は信じられない……といった顔で、俺に確認する。
「ああ。確かに受け取ったけど、それは綾香の一方的な言い分だよね。合意に至っていない。君の今の立場は理解しているけど、婚約解消はしないよ」
綾香の目を見て伝えれば、彼女は狼狽えながら反論した。
「ひ、氷堂さまのお父さまだって、私の考えに納得されるはずですわ」
彼女が言うように、花山院家のゴタゴタで父はこの婚約に反対していた。
そこで、俺は『この婚約を破談にするなら、会社を継がない』と主張して父を黙らせた。
それでどれだけ俺が彼女に本気か伝わったらしい。
綾香のためなら氷堂の家を捨てる覚悟だった。
ずっと父の望むように生きてきたが、結婚相手にまで口を出されるのはご免だ。
だが、そんな話は彼女は知らなくていい。
「俺の結婚だからね。父には何も言わせないよ」
フッと笑みを浮かべ、綾香の髪を一房掴んでもてあそべば、彼女は怯えるような目で俺を見た。
「……でも、今の私と結婚したって氷堂さまになんのメリットもありませんのよ」
卒業式に俺が車の中でキスしたことでも思い出したのか、彼女はひどく警戒している。
俺から離れたくて仕方がないんだろうな。
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