【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい~俺様御曹司と甘く危険な政略結婚~
そんな大嘘をしれっと口にすれば、彼女はじっと俺を見た。
「本当ですの?」
おい……本気で信じるなよ。
ほんとすぐに悪い奴に騙されそう。
「ちゃんと上手に人工呼吸できただろ?」
綾香の足の傷に軟膏を塗りながら臨海学校でのことを匂わせたら、彼女は首まで真っ赤になって叫んだ。
「氷堂さま!」
「興奮しない。そんなにまた人工呼吸して欲しい?」
冗談半分に言えば、綾香はへそを曲げた。
「結構ですわ!」
「はい、手当て終わったよ」
患部にガーゼのテープを貼ってそう伝えると、彼女は椅子から勢いよく立ち上がった。
「私、お風呂に入ってきます!」
「足のガーゼ、防水だけどお風呂入る時は気をつけて」
プンプン怒ってキッチンを出て行く彼女の背中に向かって注意したけど、返事はない。
まあ、子供じゃないし大丈夫だろう。
彼女がお風呂に入っている間、リビングで仕事をしていたのだが、一時間経っても出てこないので心配になった。
寝室でちゃんと寝ているのならいいが、まだ入っているのだろうか?
バスルームを覗いてみれば、風呂の電気がついていて、彼女の服も籠に置かれている。
「綾香?」
声をかけたが、反応はない。
もう一度名前を呼んでも返事はなかった。
のぼせた?
慌てて風呂のドアを開ければ、綾香が浴槽で寝ていてぐったりしている。
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