【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい~俺様御曹司と甘く危険な政略結婚~
当分戻って来なくていいですわ。
本心は隠して手を合わせて喜んでみせれば、氷堂はほんの一瞬怪訝な表情になる。
マズイ。大袈裟過ぎたかしら?
それとも私の思考を読まれた?
「綾香さん、愛されてますね。羨ましいです」
桃華さんが私と氷堂を見て無邪気に微笑むが、私と彼はそんな甘い関係ではない。
常に腹の中の探り合い。
親友にも本当のことを告げないでいるのは胸が痛いけれど、誰かに私と氷堂の関係が氷よりも冷たい関係だとバレるのはマズイのよ。
「綾香も気をつけてね。悪い男について行かないか心配だな」
甘い婚約者を演じる彼を冷ややかに見る。
「私、そんな子供じゃありませんわ」
少し拗ねるように返せば、藤原が私をなだめた。
「氷堂は綾香ちゃんのことが心配なんだよ。綾香ちゃんは美人だし、少し危なっかしいところがあるから」
藤原の言葉に氷堂が大きく頷く。
「綾香はたまに無茶なことしてこっちが冷やっとすることがあるからね。カナヅチなのに溺れた子供を助けようとして海に飛び込んだこともあっただろ?」
それは、高校の臨海学校での出来事。
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