【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい~俺様御曹司と甘く危険な政略結婚~
ベッドを抜け出す彼は、下はちゃんとパジャマのズボンをはいていた。
どうやら彼の言ったことは本当らしい。
私と彼は身体を重ねていない。
時計を探して視線を彷徨わせれば、ベッドサイドにデジタル時計があって目をこらしてみると、七時半を回っている。
会社の始業時間は九時。
確かにもう起きないと遅刻しそう。
ベッドを下りようとして「あっ」と声を上げた。
バスタオルがずれて胸が露わになる。
それを氷堂も見ていて、咄嗟に布団で胸を隠した。
「このクローゼットに綾香の着替えが入ってる」
冷やかされると思ったのだけど、彼は表情も変えずにクローゼットを指差し、寝室を出て行く。
彼がいなくなると、フーッと息を吐いた。
「ああ~、もうやだ~!私……心臓発作でそのうち死ぬんじゃないかしら」
それにしても……火事の夢を見ていた時、氷堂は私を慰めてくれた。
もっと冷めた人かと思っていたけれど、さっきも面白そうに笑っていたし……なんだか調子が狂う。
意外に優しい人なのだろうか。
ううん、惑わされてはいけないわ。あの人は悪魔よ。
吸血鬼みたいに噛み付いたじゃないの。
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