【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい~俺様御曹司と甘く危険な政略結婚~
クロワッサンを口にしながら彼はにこやかに返した。
やはり彼はイギリスで寄宿学校にいたからだろうか。
私と違って自立している。
「氷堂さまって凄いですね。なんでも出来てしまうんですもの」
素直にそう思ったのだが、彼は謙遜する。
「単になんにでも好奇心が旺盛なだけだよ。それに負けず嫌いなんだ」
「謙虚ですのね。私はどんなに頑張っても勉強もスポーツも……他の何もかも全てあなたに敵いませんでしたわ」
彼のライバルにもならなかった。
「謙虚なのは綾香だよ。俺は君に完敗してるんだよ」
氷堂の思いもよらぬ言葉にキョトンとなる。
はて? 私が氷堂に勝った?
「私に完敗? なににですの?」
全く記憶にないのだけれど。
「そのうちわかるよ」
彼は謎めいた笑みを浮かべると、すぐに話題を変えた。
「そう言えば、藤原も綾香のこと知ってるよ。君の姿が少し変わってるのには驚いただろうがね」
氷堂が私の事情に通じているのだから、その親友の藤原が知っているのも当然か。
「あの火事で髪が少し焦げてしまって……。それに……メガネは気分転換ですわ」
金銭的事情でコンタクトからメガネにしたなんてみっともなくて言えない。
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