【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい~俺様御曹司と甘く危険な政略結婚~
ちらりと壁時計を見れば、彼女は「会食の件、ありがとう。参考になったわ」と私に礼を言う。
赤石さんの目を見てコクッとすると、海外戦略室に戻った。
それから来客対応やメールの処理に追われ、あっという間に午後の七時。
三十分ほど前に氷堂に明日のスケジュールに関するメールを送ったが返信はない。
もう今日は帰ろう。
デスク周りの書類を片付けていると、隣の席の藤原が私に目を向けた。
「綾香ちゃん、もう終わりそう? 今日は氷堂がいないし、僕が送って行くよ」
「お気持ちだけで充分ですわ。もう子供ではありませんし、大丈夫です。ひとりで帰れます」
彼の申し出をすきのない笑顔で断る。
「いや、綾香ちゃん、そういうことじゃ……!?」
慌てる藤原の肩を、出先から戻ってきた剣持さんがポンと叩いた。
「好きにさせればいいじゃないか、藤原。お嬢さまは冒険がしたいんだとさ」
私を見て意地悪く目を光らせる剣持さん。
……ひょっとして、彼も私の身元を知っているのかしら?
でも、うちの部署の他のメンバーはみんな私のことをわかっているのだから、もうそんなに驚いたりはしない。
「『冒険』ではありませんわ。自立です」
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