荒れ果てた世界に緑を。



それから数年が経ったある日、ビオラは研究所の隅にある植木鉢に水をかけていた。紫の種類の違う花が咲いている。

「綺麗だね」

アイリスは花を見ながら微笑む。ビオラは「でしょ」と微笑んだ。ビオラのおじいさんは、アイリスが初めて起動した日から1年後に亡くなっていた。

「右から順番に、スミレ、ビオラ、アヤメなんだ。ちなみに、スミレの英名は『ヴァイオレット』、アヤメの英名は『アイリス』なんだよ」

ビオラの説明にアイリスは「え?」と首を傾げた。アイリスの知能は普通の人間と同じ。アイリスも新しく覚えたことを記憶する機能がある。

「ふふっ。ちなみに花言葉は、スミレは『謙虚』『誠実』、ビオラは『小さな幸福』、アヤメは『良い便り』『希望』なんだ」

ビオラの説明にアイリスは納得する。そして、あることに気づいた。

「ねぇ、ビオラ…私とビオラの名前って名字もそうだけど花の名前だよね?」

「そうだよ。だから、俺は花が好きになった。アイリスの名前の由来も花からだからね」

ビオラは悲しそうに笑う。アイリスはビオラの笑みの意味を全く理解が出来なかった。
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