君へのLOVE&HATE
#5
あの日から
もう二か月・・・
私と穂積の関係は続いている。
私の表情とか、雰囲気をみて、放課後話を聞いてくれたり、ただ、時間を過ごすことから、いつの間にか、それは、親密な関係になって、お互い触れ合っている。
私はそれを、、受け入れて許している。
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私の通う高校は、1年生の7月に生徒同士の親睦を深めるために1泊2日のサマーキャンプがある。
クラスごとに班を分けて、フィールドワークをしたり、野外炊飯をしたり、基本班ごとの行動をする。
だいたい男女3人ずつの6人チーム。
そして親睦が目的だから普段から仲良しの人たちとは同じグループにさせないという目的があるらしく
出席番号、なおかつさらに偶数と奇数で男女それぞれ組み合わせをわけるというやり方ですでに担任が決めているものを伝えられる。
その年でどういう組み合わせになるのかわからないから、だいたいの予想はつくものの結構、発表されるまではわからなかったりする。
「今日のホームルームでキャンプのグループわかるかな~」
目の前の席に座るナコちゃんが緊張と楽しみ半分という感じで話する。
だいたいキャンプの一ヶ月前に発表されるからもうそろそろかななんてナコちゃんと話ししていた。
予想通り、
6限目のホームルームでグループ発表された。
「佐々木さん、よろしくね」
表向きの紳士的な笑顔を見せる。
「こちらこそ、香椎くん」
私も作り笑いで返す。
グループは私と穂積と、ナコちゃんとナコちゃんと同じ部活に入っているサナちゃん、、そして、野球部に、所属している田中くんと、加賀くんになった。
みんなで軽く挨拶して、
野外炊飯の役割とか、グループのなかでの役割とか決めて、その日は終わった。
放課後、なんとなく今日あたり、穂積から誘われるのではないかと思っていた。
ここしばらく、穂積とは触れることがなかったから
もしかしたらと思っていたけれど、
帰る用意をしている間に、いつのまにか隣の席には誰もいなかった。
「同じグループよろしくね!」
私も友達と同じでよかった。
知らない人と、違う環境で行動を共にするのは、ストレスになるから。
「うん、こちらこそ!」
ナコちゃんは、視線を隣にずらして
「香椎くんも一緒だなんて、うれしいなぁ。」
なんせ、あんなカッコいい人と同じ班だなんて、と嬉しそうに話した。
「香椎くんって、やっぱりモテるの?」
素朴な疑問だった。
噂でしか聞いていないから実際どうなのか。
「外見もいいし、成績も優秀だし、紳士的だし、そりゃ、女の子にしたら放っておかないじゃないー?」
「ナコちゃんも?すきなの?」
「私?私は、すきとかより、アイドルに騒いでる?って感じかな。」
「あぁ、なるほど。」
でも、そういえば、、とナコちゃんが急に思い返して
「香椎くん、確か年上の彼女いたんじゃないかな。あっほら!あれ!」
ナコちゃんの、指差した方を見ると
窓から校門で穂積と、ロングヘアで、穂積の胸元くらいの身長の女の子が一緒に歩いているのが見えた。
「なんか、最近よく、帰り待ち合わせしているのか、二人で帰ってるみたいよ?」
最近、、、。
そういえば最近、まったく二人きりで会っていない。
気がついたら放課後、穂積はいなくなっていた。
「っ!」
ぎゅっと胸が痛くなった。
なにこの気持ち。
気分が悪い。
気持ち悪い。
そして、心臓の鼓動がやたら早くなる。
「あの人、彼女みたいだよ?隣のクラスの子達が、二人が手を繋いだり仲よさそうにカフェとかにいるって話ししていたよー。」
耳がキーンと音がして
周りの音が遮断された。
遠くからでも
穂積がその女の人と歩きながら、時折肩を抱き寄せながら進んでいる姿に特別な感情を感じた。
穂積はあの人がすきなのだ。
息苦しい。
どんなに
息を吸い込んでも
胸が苦しくて苦しくて
気が遠くなりそうだった。
仲良さげに学校から離れていく二人を教室の窓からただぼーっと見てた。
まるで映画を観ているかのような
現実とは思えない感覚。
透明な、フィルターが、幾重にも重なっているかのようにあの二人から私は完全に遠い距離が存在していた。
彼氏と彼女。
私のように、穂積を誰かの身代わりにして成立している間違った関係とは違う、ちゃんとした、関係。
もともと、私たちの関係の方が間違ってて、歪んでいた。
だからむしろ、忘れてくれた方がいい。
なかったことにしてほしい。
わたしだけが、穂積を利用していたと思っていたけれど、
それは、勘違いで、
お互いにお互いを利用していたのかもしれない。
穂積はわたしと同じく、届かない想いを誰かに抱えていたから、
わたしを利用した。
わたしも穂積を利用したように。