君へのLOVE&HATE
#6
「佐々木さん、キャンプ合宿の買い出し、今日の放課後いける?」
「あっ・・うん」
「じゃ、帰り玄関で」
「うん」
キャンプ合宿のリーダーが穂積で、サブが私になったのは神様のいたずらなのか・・・。
くじ引きで決まったとはいえ、なんだか、改めて堂々とこうしてかかわる機会があるのは気恥ずかしい。
あの日、穂積と彼女の姿を見てから、二週間が過ぎた。
わたしは穂積と距離を、取っていた。
二週間ぶりに会話らしい会話をして
緊張で喉がカラカラした。
もともと、教室とかでかかわることはなかったこら、表面上は変わらない。
クラスメイトとして、やり取りをすることはして、穂積から来るメールや電話、ノートの切れ端の手紙、全てにおいてわたしは返事をしなかった。
それまでは、いつも、どこかで穂積とは特別な関係があると意識しながら、大勢の前ではそれを隠したまま距離を保ちながら関わっていた。
・・・って
なんだかおかしい。
ふつうはこれが当たり前なのに。
むしろ、恋人でもないのにお互いに彼氏彼女がすることをしているのが違っていた。
間違っていたのを修正しただけ、なのに。
穂積から連絡が来るたび、修正を修正したくなる。
いますぐにでも、二人きりになりたい。
私に触れてほしい。
でも、それはもう、叶わない。
……………………
キャンプ合宿まであと、3日。
キャンプでいくつか用意するものがあってそれを買い出しにいけるのが部活に所属していない私と穂積だけだった。
放課後、隣を歩いているのがなんだか違和感。
何か言われるかもと覚悟していたけれど、まったくそれはなくて
二人とも無言で歩いていた。
隣をあるく穂積が改めて身長が高くて顔立ちがスッとしてて
格好いいのだと思い知らされる。
一緒に歩いていると、すれ違う女子たちの視線が穂積に注がれるのを感じる。
そして
隣を私なんかが歩いてていいのかと思ってしまう。
そういえば・・・
穂積に和樹くんのことがばれたあの日以来かもしれない・・。
最初の沈黙を破ったのは穂積だった。
「こうして二人で並んで歩くの、ひさしぶりだね」
「うん」
穂積も、あの日のこと思い出したのだろうか・・・。
「お姉さんの結婚式、もうすぐだっけ?」
「10月」
「そっか・・。景都は和樹さんとのこと、どうなの?」
「えっ。どうって・・」
「大丈夫なの?」
「・・・・大丈夫も何も、結婚するんだからあの二人は。」
和樹くんとはあの日から話もしていないし。もし、また話ししたら自分がどう思っているのか・・わからるのかもしれない。
考えないようにしているだけかもしれない。
だけど、これだけは言える。
もう、和樹くんに気持ちはない。
「景都、俺のこと、無視していたのはなんで?」
「無視してない」
「メールも、電話も、、返事してくれなかっただろ?」
「....」
「何かあった?」
怒っているかもしれないと思ったけど、
穂積は横で心配そうな顔をしていた。
いうべきかどうか悩んで、
重くるしい口を開けた途端
「あっ、聞きたいことがあ」
「景都?」
ふと、背後から、よく通るハリのある声が聞こえた。
振り返ると、ベージュピンクのサマーニットとネイビーの花柄のフレアスカートに黒のバレーシューズというどこからみても完璧な清楚な装いの姉と・・・
「あれ?景都、ここで何してるの?」
黒のチェックのシャツとグレーのスーツパンツの和樹くんがいた。
姉が手を振りながら近づいてきた。
キラ・・
太陽に光に姉の左薬指が反射した。
きれいなダイヤモンドの石が飾られている指輪・・。
思わず目を背けた。
「景都、どうしたの?・・・ってごめん、お邪魔しちゃった?」
姉は隣にいる穂積を見て、ごめんね。と申し訳なさそうにつぶやいた。
「ううん、来週学校でキャンプ合宿あるから、それの買い出しなの。同じ班の香椎君」
「初めまして」
穂積が、軽く会釈する。
こういうところ、育ちがいいんだろうなと思ってしまう。
「君は、前にもあったことあるよね」
和樹くんが、にこやかな顔で穂積を見る。
姉もいるせいか、にらんではいないようだけど、声が低い。
あまり、和樹くんと、穂積を会わせたくなかった。
和樹くんが何を言い出すのか怖かった。
「はい。あの時は名前も名乗らず失礼しました」
穂積は、冷静にかつ、抑揚のない声で、挨拶をした。
早くこの場を離れたかった。
一刻も早く・・。
この二人の前に立っているのはつらすぎた。
「香椎くん、いこう」
「あっ、あぁ」
それじゃと言いかけたとき
「景都、まだ時間ある?よかったらお茶しない?」
「えっ・・でも」
「喉かわいたしすこし疲れたから。よかったらどう?すこしだけでいいの」
「紗希、景都も香椎君も用事があるんだし」
和樹くんを制して姉はそれでもひかなかった。
「じゃ・・お言葉に甘えて」
穂積が折れた形になった。
「ありがとう。」
そういう姉の笑顔がすこし怖かった・・・。