君へのLOVE&HATE
キャンプは、一日目はフィールドワークをして、、夜はバーベキューだった。
バイキング形式で二時間。
グループ関係なく立食式だった。
同じクラスの女子たちとわいわいしている中にそれなりに話を合わせて
お肉を焼いたり
野菜を焼いたりしていた。
女子たちのなかで話しているよりも
こうして焼いたりするほうが気持ち的には楽。
ひたすらお肉を焼いていると
「景都、こっちおいで」
耳元でささやかれてびっくりした。
いたずらっ子みたいな笑顔をして穂積が私の手をつかんだ。
「えっ?」
有無を言わせずに引っ張られて森の奥、暗がりのほうへ連れていかれる。
「どうしたの?」
「いいから、いいから」
しーと口に指をあてて笑う穂積の顔がかわいくてどきどき。
「景都、俺がいいっていうまで目つぶってて?絶対みたらだめだよ」
「うん」
なんだろう、ドキドキしながら目をつむる。
目をつぶり、穂積に導かれるように手を引っ張られる。
すこし歩いて立ち留まる。
「ゆっくり目をひらいてみて?」
言われてすこしづつ視界を開ける。
「わぁ!!」
目の前は光輝く一面の世界だった。
そして
小さい光が無数に絨毯のように足元を照らしていた。
「ここの近くに河川でゲンジボタルが見れるって聞いて、って景都と一緒にみたかったんだ」
「うん、すごいね」
蛍の光に照らされた穂積の顔が近くなり一瞬軽く唇を重ねた。
「景都?大丈夫?暗いから気を付けて」
「うん」
穂積が私の手をぎゅっと握ったから、私も同じく握り返した。
「きれいだね~」
「あぁ。」
「ありがとう、こんな素敵なところ連れてきてくれて」
「・・・・」
穂積は何も言わないで私の頭をなでた。
穂積がすこし照れていたような気がした。
きれいな光の空間にしばらく二人で言葉をなくしていたとき
ふと
三日月が見えて
あの日のことを思い出した。
あの日もこんな三日月の光がきれいな夜だった・・・。
「あの人は・・・」
「えっ?」
「あの人とは付き合ってもいないし彼女でもないよ」
あの日、穂積はそうつぶやいた。
学校の、二人の秘密の場所で
お互い抱きしめあいながら、
窓越しに見える三日月を二人で見ていた。
「でも、一緒に帰っていたり、仲がよさそうだった」
「見ていたの?」
穂積のことを見てたのだと思われて急に恥ずかしくなって
下を向いた。
穂積は、前の彼女で、今度、両親の転勤で海外に行くから
渡米するまでの二週間、思い出がほしいからって一緒にいたらしい。
もともとスキンシップも多い彼女で、
付き合っていたこともあるから
自然と仲良く見えたんだと思う・・って穂積は話してくれた。
一緒にご飯食べたり出かけたりするだけで、それ以外のことはしていない。
放課後も前彼女とデートをしていたから必然と時間がなかったといっていた。
景都に説明する必要があるのかどうか悩んだ・・とも。
自分が思うほど景都は自分との時間に執着はないと思っていたから・・と。
前彼女が渡米して、景都に触れたくて仕方ない気持ちを我慢していたからすぐにでも二人きりになりたかった。
でも、私は、誤解して穂積から距離をとっていた・・。
「あの時、しばらく穂積と二人きりで会うことがなかったこと、あったでしょ?」
「・・・うん」
「たまたま、放課後、女の人と二人で帰るのを見て、覚悟しないといけないのかなって思ったの」
「覚悟?」
「・・穂積にちゃんと大切な人が現れたら、私は消えないといけないっていう覚悟。」
「・・・」
「そういう覚悟はできていたんだけど、でも、穂積の隣に誰かがいることになるってていう覚悟ができていなかったんだと思う」
「景都・・・」
「だから、すごく苦しかった。穂積が私に同情しているだけで、気持ちなんてないって思っていたら。・・・・・・・それに」
「・・・・それに?」
「・・・・大事なこと伝えられていなかった・・。」
「大事なこと?」
「・・・。私ね、図書室で穂積とはじめて話したときから、穂積に惹かれていたよ。だから、穂積は和樹くんを重ねていいって言われていたけれど、私は穂積を和樹くんだと思ってみたことは・・・一度もなかったよ」
穂積が口元に手を当てて恥ずかしそうに横を向いた。
「あの時、景都に触れたくて仕方なかった。景都がオレのこと無視して、本当に不安定だった。教室で、みんながいるところで、勢いで抱きしめたいと思った」
「ごめんね。もう、大丈夫だから」
穂積のきれいな顔をてのひらでなでる。
穂積のほほが熱いのを感じた。
穂積は一瞬、目を伏せて
「・・・景都、スキだよ」
ささやきと一緒にやさしいキスをしてくれた。