可愛い女性の作られ方
「酔ってるんだよね、かくた……?」

「……そんな潤んだ目で見つめられたら……我慢できない、っていってるでしょう?」
 
……一瞬だけ、泣き出しそうに顔を歪ませた加久田の唇が、私の唇にふれる。
抵抗しようとするのだけれど、久しぶりにするキスは信じられないほど気持ちよくて溺れてしまいそうだった。

「……かく、た……やっ……」
 
唇が離れて、拒否しようとしたのだけれど、甘い吐息をこぼすだけの結果になってしまう。

「……心配しなくてもうんと優しくして、気持ちよくしてあげますから……」

「かく……ん……」

私の口を塞ぐように、また加久田の唇が重なる。
優しく優しく、激しく……そのまま私は溺れてしまって、……あとのことはよく、覚えていない。


ずきずきと痛むあたまで目が覚めると……隣で加久田が、眠っていた。

……なんで加久田がここに!?
てかこれって、どうみても、……そういうこと、だよな?
えーっと、考えろ、考えろ、考えろ……。

まだ靄がかかったようになっているあたまをはっきりさせるように、シャワーを浴びる。

……えーっと、昨日は裕紀の結婚式で、
帰る途中で加久田に会って、それでやけ酒に付き合わせて、そんでもって、店を出たけど飲み足りなくて、うちに誘って、それで更に飲んで……。

ああ、なんか凄い恥ずかしいこと、加久田にいっていた気がする。
で、加久田が憧れていたとかなんとかいっていて、押し倒されて、キスされて……。

うん。
そっからあとのことはよく覚えていないけど。
でも、大体思い出せた。

……で。
これはどうしたらいいのかなー?
 
浴室から出ると、まだのんきに寝ている加久田に腹が立ってくる。

……おまえのせいで、こんなに悩んでいるっていうのに。

時間を確認すると朝七時ちょっと前。
加久田んちはうちから電車で三駅のはずだから……いまから起こして、余裕で会社、間に合うな。

「加久田。
おい、加久田、起きろ」

「……んー。
あー、先輩、おはようございまーす」

「おはようございます、じゃない。さっさと起きて服着ろ。
一回帰らないとおまえ、出社できないだろーが」

「そーですねー」

……大丈夫か、こいつ。

内心毒突きつつ、炊飯器を開けておにぎりを握る。
緊急だから塩にぎりに海苔巻いただけ。
二つほど作ってラップを巻いて適当なレジ袋に放り込んだら、加久田が出られるようになっていた。

「昨日のことは、その、いいたいことも聞きたいことも結構あるけど、とりあえず、会社が終わるまで保留にしとく。
それで、これは、時間があったら朝食代わりに食え」

「わーい。
先輩が朝ごはん作ってくれたー」

「うるさい。
遅刻したら殺すからな」

「殺されないように頑張ります。
じゃあ」
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