可愛い女性の作られ方
Tシャツに裾上げしないでいいよう、ハーフパンツになっていた。

「おまえ、その格好で帰りはどうするんだ?」

「え?」

なにが?って顔で首傾げてるけど。
やっぱおまえ、考えていないんだろ。

「靴だよ、靴。
合わないだろ」

「あー、仕方ないのでもう一回、スーツに着替えます」
 
えへへじゃないよ、まったく。

「シャツ貸せ。
ついでに下着も出せ。
洗濯しといてやるから。
この天気なら、すぐ乾くだろ」

「……ありがとうございます」
 
さっき、洗濯機まわしかけて、保留にしといて正解。
こんなことになるんじゃないかって、思っていた。


その後。

途中で洗濯物干しつつ、加久田とふたりで部屋の片付けした。

「読んだ本はどうするんですか?」

「雑誌は業界誌を除いて処分。
本は手元に置いておきたいのを除いて古本屋に持っていくけど、それでも残りの本が多いときは、仕方ないから実家に送りつける」

「……怒られませんか?」

「うちの両親はもう、諦めがついてる。
それに、本に一部屋もらう代わりに、庭に倉庫、建てておいたから」

「……微妙な親孝行ですね」
 
加久田は部屋を見てもわかるように片付けが上手いらしく、てきぱきと私の部屋を片付けていく。
私といえば、指摘されていた通り、たびたび本を読みふけり始めて、何度も注意を受ける羽目になった。


「その、すまんな。
手伝わせた上に、晩ごはんがこれ、とか」

「いーえー。
俺からやりたいっていったんですし。
それに、俺にとってごちそうは、一番は先輩が作ったごはんで、二番は先輩と食べるごはんです」
 
テーブルの上には、宅配ピザとビール。
部屋の中は相変わらず本が積んであったが、大半は処分・古書店行き・実家行きと分類してあった。

「いや、でも、助かった。
ひとりでやってたら絶対、一日で終わらないどころか、永遠に片付かなかった気がする」

「……なら、ご褒美おねだりしていいですか?」

「……な、ん、だ……?」
 
テーブルを回り込んだ加久田が迫ってくる。
なんとなく後ろにじりじりと下がっていってしまう。
今日は、このあいだよりは長く下がれたものの、やっぱり背中は壁についてしまう。

「……優里」
 
掠れた声でそう囁かれて、思わずぎゅっと目を瞑る。

……でも。

いつまでたっても、思っていたことは起こらない。
恐る恐る目を開けると、加久田の奴が吹いた。

「キスするとでも思ってたんですか?
そうそうしませんって」
 
ケラケラ笑っている加久田を見て、ほっとして身体に入っていた力を抜く。
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