可愛い女性の作られ方
「……なんてね」

「んっ……!」
 
ほっとしたのも束の間、やっぱり唇を重ねられた。
毎度のことながら、私は溺れないように必死だ。

「……かく、た……!」
 
涙目で睨んでみたところで、効果はない。
余計に加久田を喜ばせるはめになる。

「今日も拒否、しなかったからいいんですよね?
それに、ご褒美欲しいっていったでしょう?」

両手で、壁に手首を押さえつけられて、首筋に唇を落とされた。

「……かく、……まっ……」

「……待てませんよ」

「……やっ……シャワー、……浴びさせて」

「……はぁーっ。
いいですよ」
 
加久田から逃げるように浴室に行く。

身体が熱い。
まだ二度しか体を重ねたことがないのに体が、加久田にふれられることに喜んでいるのがわかる。

……私この先、どうなっちゃうんだろう?


浴室を出ると、ベッドに押し倒された。
溺れそうに激しいキスをされた。

「優里、いっぱいいっぱい感じてください。
身体で、俺のこと覚えて。
忘れられなくなるくらい、刻み込んで」
 
あとはひたすら、溺れないように必死で掴まっていた。
何度も、何度も、加久田の名前を呼んだ。

……貴尋、って。

気が狂いそうなほど気持ちよくて、ほんとに狂ってしまえたら楽なのに、って思った。


加久田の腕の中でうとうとする。
何故か、体のだるさが心地いい。
夏だから、人の体温なんてただ暑いだけのはずなのに、どうしてだか、ひどく安心する。

「今日も可愛かったですよ、優里」
 
……おでこにチュッとキスされた。

「……そう、かな……」

「はい。
……もうゆっくり休んでください。
おやすみなさい」

「……おやすみ」

……そのままゆっくりと、穏やかな眠りに落ちていった。


翌朝。
加久田は私の作った朝食を喜んで食べて、私がアイロン掛けたシャツを喜んで着て、クリーニングから帰ってきたスーツをちょっと残念そうに持って帰った。

……いや。

最初の二つはかろうじて、理由はわからなくもない。
しかし、最後の一つはなんだ?
なんでクリーニングに出して返した服を、「なんで出しちゃったんですか?」って、残念がられなければいけないのだ?
まったくもって訳がわからん。


その後も。
職場では相変わらず、何事もなかったかのように過ごした。

……いや。
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