可愛い女性の作られ方
加久田の奴は平然とした顔しているんだけど私は妙に意識してしまって、平常心でいるようには勤めているんだけど、時々美咲ちゃんに不審がられる羽目になった。
しかもたまに、加久田の奴が「優里」とかさりげなく囁いてくるもんだからたまったもんじゃない。
その度に睨み付けてやるんだけど、逆効果にしかなっていない。


金曜日になると。
加久田はちゃっかりうちに来て、私の作ったごはんを嬉しそうに食べる。
たまに私の方が帰りが遅い日があるので、仕方なく合い鍵を渡している。
でも何故か、絶対に私より先に、家に入ろうとしない。

……なんでだろう?

そのあとは結局、いつもまあ、そうなってしまう。
私の身体は、確実に加久田にふれられる喜びを覚え込んでいっている。
先週よりも今週。今週よりも来週。
どんどん、気持ちよくなっていく、身体。

……心とは裏腹に。

加久田のことは。
有能で物わかりのいい、よくできた部下だと思う。

……でも、そこまで。

それ以上の気持ちは、持てない。
というか、それ以上のことを考えようとすると、気持ちにブレーキがかかる。

……怖いと思う。

いままで何度も、「男とは付き合えない」そういわれて振られてきた。
今度こそ大丈夫、そう思った裕紀だってダメだった。
また、そういわれて振られたら?
しかも、今度の相手は年下だ。
加久田は私のこと、大事にしてくれる。
ちゃんと、女扱いしてくれる。

きっと。

加久田のこと好きになって、ちゃんと付き合ったら、加久田はいま以上に私のこと、大事にしてくれて、幸せになれるんだろうと思う。

……でも。

ダメになったら?

今度こそ、私はもう、立ち直れない。
生きていけなくなるかもしれない。
だから怖くて、好きだけど好きじゃない、いまの微妙な関係でいたい、って強く願っていた。
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