可愛い女性の作られ方
「動けそうだったら俺が出て行ったあと、着替えてください。
結構汗、かいてますから。
それから鍋におかゆ作ってますから、食べられそうだったら食べてください。
あと、合い鍵、借りますね。
鍵かけないで出て行けないですし。
また帰り、様子見に来ます」

「……うん」

「……そんなに不安そうな顔、しないでください。
帰り、絶対来ますから」


なんでか加久田はまた困ったように笑ってそういって、私のあたまを撫でて出て行った。
加久田が出て行くと薬が効いてきたのか、だんだん眠くなってくる。

……不安そうな顔?
私、そんな顔、していたのかな?
ああきっと、病気になってちょっと弱気になっているからだ。
加久田にそんな顔見せるなんて、ダメだな、私……。



次に目が覚めたとき、もうお昼をまわっていた。
眠る前より随分楽になっていて、汗でべとべとのシャツを脱いでパジャマに着替える。

……というか。

スーツを脱いだだけで、シャツと下着で寝ていた自分に驚きだ。
加久田の奴は……どこまで見たんだろう?

少し空腹を感じ始めていたので、キッチンで加久田が作ってくれていたおかゆを温めて食べた。

「……おいしい」
 
こんなふうに。
誰かに看病してもらうなんて、いつぶりだろ?
裕紀は病院嫌いの私を、無理矢理連れて行きはしたけど……「あとは寝とけ」って、看病はしてくれなかった。

食べ終わってお茶碗を水につけるだけして、薬を飲んでベッドに戻る。
熱は下がったのか、もう今朝のようなだるさはなかった。
ベッドに戻ったもののじっとしているのはなんだか落ち着かなくて、結局ベッドから出て眼鏡をかけてパソコンを立ち上げる。
そのまま私は、家でできる仕事を始めていた。



「なんで寝てないんですか!」
 
夜になって、宣言通りにうちに来た加久田が、仕事をしていた私を見てちょっと怒っていた。

「もう治った」

「熱は!」

「たぶん下がった」

「たぶんってなんですか!」
 
怒ったまま私に体温計を渡す。
仕方ないので脇に挟んで、大人しく検温が終わるのを待つ。

「……三十七度二分。まだ下がってないじゃないですか」
 
……体温計を見た加久田に、睨まれた。

「……ほぼ平熱、だろ」

「そんなことしてるとまた夜熱が出て、明日も休まなきゃいけなくなりますよ」

「ううっ」

「ごはん食べたら、今日は大人しく寝ててください。
いいですね?」

「……はい」
 
……なんだろう?
なんか、今日は、……加久田に、勝てない。

「食欲はありますか?」
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