可愛い女性の作られ方
「ある」

「じゃあうどん、作りますから」
 
キッチンで作業を始めた加久田の後ろ姿を見ながら、仕方なくパソコンを落とす。
きっと加久田は結婚したらいい旦那さんになるんだろーなーとか莫迦なことをぼんやり考えていると、目の前にどんぶりを置かれた。

「お口に合うかどうかわかりませんが」

「いや。
ありがとう。
いただきます」

食べている間、加久田はなぜか幸せそうな顔して、私のことを見ていた。

「……私の顔になにかついてるのか?」

「……えっ?
あ、いいえ」
 
そういうと、慌てて私から視線を逸らす。

……変な奴。

食べ終わって薬を飲むと、強制的にベッドに入らされた。

「眠るまで、傍にいますから」

「子供じゃないんだから。
ひとりで眠れる」

「ダメです。
見張っとかないと、また起き出して仕事しかねない」

「……わかった」
 
さっきのことがあるから、言い返せなくて渋々納得した。

「そういえば、薬代とかいろいろ、加久田に払わせてるんだよな。
明日で悪いが、請求してくれ」

「いいですよ。
俺が好きでやってるんですから」

ふふっとなぜか、加久田がおかしそうに笑う。

「……どういう意味だ?」

「え?
ああ。
なんでもないです。
まだ先輩は、知らなくていいんです」

「加久田……?」
 
なんでおまえ、そんなに苦しそうな顔、しているんだよ?

「ほら、先輩が早く寝ないと、俺、
いつまでたっても家に帰れないじゃないですか。
それとも今晩も、泊まって欲しいんですか?」

「ば、莫迦いうな……!」

顔が熱くなってきて、加久田に背を向ける。

……よく考えたらこいつ、
昨日一晩私のこと、看病してくれたんだよな。

「そ、その、……ありがとな、加久田」

「どういたしまして」
 
おそるおそる姿勢を元に戻すと、加久田はいつもの人懐っこい笑顔になっていて、なぜかほっとした。

そのうち、薬が効いてきたのかうとうとし始めて、次第に眠りに落ちていく。

「……優里。
おやすみなさい」

一瞬、名前で呼ばれたような気が、した。
問い返そうにも、眠気であたまが働かない。
そっとあたまを撫でられて、額に唇を落とされた。
目を開けたくても、もう開けることができない。
どういうことか確認できないまま、眠りに落ちていった。
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