ハートの国の王女様は、三人の王子に求婚される
エレンに抱きしめられながら、杏はふと思った。エレンがここにいるということはーーー。

「あっ!ここにいたんだ〜。杏ちゃ〜ん!!」

フェリシアーノが姿を見せる。そして、杏の頰にキスをした。

「ちょっとエレン!僕の杏ちゃんに触らないでよ!」

怒りながらフェリシアーノはエレンを睨む。エレンは「えっ?僕のだよ?」と杏をさらに強く抱きしめる。

杏の心臓が限界になったその時、ガサガサと草木が音を立てた。何かが近づいてくる。

「何?森に住む魔物?」

キャットが目を輝かせ、ハンスたちは怯える。

「僕が守るよ!」と言われ、杏は二人の王子に挟まれていた。

草むらから飛び出してきたのは、一頭の白い馬だった。ガレリアンが無表情で乗っている。

「ガレリアン様、どうされましたか?」

杏がそう訊ねると、馬から降りたガレリアンは「来い」と一言言った後、杏を抱き上げた。

「えっ!?ちょ、まっ……!」

戸惑う杏に、「女王陛下がお呼びだ」とガレリアンは静かに言い、杏の言葉も聞かずに連れ去った。
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