ボクらの愛しい生徒会長様には秘密があるらしい。
《 陽乃 side 》

午前8時02分。

殆どの生徒は聖堂での朝礼に参加している為、校舎内には数名の生徒役員と教員しかいない。

新学期が始まってから今日でやっと2週間と3日。

広い敷地内で迷う生徒達を毎日のように誘導する日課も収まりつつあるのが大変喜ばしいことだ。


「えぇ?!ちょっと会長!何でまだ校舎に?!今日は朝礼で新入生歓迎プログラムの説明しなくちゃでしょ?!」
『おはよう千里(センリ)。風紀委員の仕事は無事に終わったのか?』
「あ、うん。一般生徒達はほぼ移動させた…って、違う!何でまだいるのか聞いてんの!」
『心配するな。今日はそういう気分じゃなかったから副会長に全て任した。安心だろう?』
「絶対にそれ美鶴(ミツル)ぶちギレてるぅ…」


廊下の窓から聖堂を眺めていればバタバタとこちらに走ってくる足音が聞こえ、見れば焦った様子の私の友人だった。

彼は我が学園の頼れる風紀副委員長である多々良 千里(タタラ センリ)。

自由人が多過ぎる…胃が痛い…と呟きながら胃薬を飲む光景は彼の十八番だ。

あまり無理は良くないぞとアドバイスしたら誰のせいだと思ってるんだ!と怒られたのは記憶に新しい。


「まったく…朝礼の件は良いとして、転入生の方は大丈夫なの?今日からだよね?」
『あぁ、確認済みだ。朝礼が一段落した後の9時に職員室に来るらしい』
「道に迷わないと良いけど…てか、このズレた時期に転入ってかなり珍しいよね」
『実に興味をそそられる対象だな』
「出たよ会長の面白いこと大好き癖…」


呆れた表情をした千里だが面白いことが大好きなのは人間の性じゃないだろうか。

新しいこと、不思議なこと、愉快なこと。

人々が追い求めてきたように私もそういったものを常に追い求めているのさ。

日常には何か刺激がないとつまらないだろう?


「取り敢えず聖堂にはちゃんと行きなね!俺はもう少し校舎内見回らなくちゃだから!!」
『分かった分かった。職務に励みたまえよ』
「そっくりそのままお返しするよその言葉!」


来た時同様にバタバタと走り去っていった千里を見送り、言われた通りに聖堂へと足を進めた。

これで行かないとまた千里が胃薬を飲むことになるだろうしな。仕方ない。


(美鶴にも後で感謝のケーキを渡さ……ん?)


校舎を出て聖堂へと向かう道すがら、薔薇園の中に人影が通るのを見付けた。

ここで見ないふりをして朝礼サボりを見過ごしたことが何かの事故で風紀にでも伝わったら後々面倒だ。

あの鬼委員長が黙ってないだろう。

一つ頷いた私は薔薇園へと入っていった。
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