【完】Mrionation
と、後ろから聞き慣れた声がする。
「志野〜。俺にもあっついコーヒーちょーだい?」
突然そう言われ、両肩をふわっと抱かれるように引き寄せられて、私の全身の肌が粟立つ感覚に陥る。
それを悟られないように、私は背の高い彼の方を向いて、わざと怒った顔を作った。
「もぅ!小窪さん!いつも思いますけど!気配消して人の背後に立つの止めてもらえます?!」
「えー…?それは志野がぼーっとしてたからっしょ?」
「?!いつから見てたんです!?」
「んー…最初から?」
もしかして、小さく吐いた溜息さえも見られていたのかと、身構えるも彼はにこにこ笑って私の肩から手を離すと、カップをくれと要求してくる。
それがなんだか悔しくて、私はむぅと口を尖らせてから、一番最初にドリップされたコーヒーを差し出した。
「火傷しても知りませんからね!」
「火傷したら、志野に治して貰うからいいよーん」
「はぁ?どうやって?!」
「それはぁ…ナ、イ、ショ」
「っ!答えになってない!」
「ほらぁー…こうさ、甘ーいキスとかさ?」
ぱちん
華麗なウィンク。
こういう時に、何をしてもムカつく程イケメンはイケメンなんだなとかときめいてる自分に腹が立つ。
「この、セクハラ大魔王め!」
「えー…?健全な男の子の証拠じゃーん」
「はいはい。好きに言っちゃってて下さいよ。てかコーヒーあげたんですから、さっさと消えて」
「志野ってばドS!そこも、いいけどなー。イイ女なんたけとなー…」