【完】Mrionation
意味深な一言に、ぐっと言葉を詰まらせると、くくくっと楽しそうに笑って、彼はコーヒーカップを持った方とは逆の手で私の、掛け始めたばかりのウェーブヘアを撫でた。
「その髪型、似合ってるよ」
「え…?」
「さーてと。志野から愛情たっぷりのコーヒーも貰ったし、次の会議張り切っちゃおっかなー」
肩をくるくる回して、一つ深呼吸をすると彼は何でもないことのように、また一つ私の髪を撫でた。
「少しくらい、自信持てって。志野は志野だからいいんだから」
もう、この人と話すだけで妊娠しそうなんですけど…。
そう、目眩を感じる。
そう思うくらい、彼はひらひらと舞う美しい蝶のようで、そして、常に太陽のようで眩しい。
徐々に大きくなる、願望。
この人に、抱かれたい。
身も心もトロトロに溶かされたい。
彼ならば、私の心の傷も空っぽな愛情の穴も、埋め尽くして、そのまま最果てまで連れて行ってくれそうだ…。
あの、天国という極みに。
疼く体。
期待感。
触れられた時に漂う甘い甘いフェロモン。
妖しい…駆け引き。
既にそれが、始まっている。
そう感じずにはいられなかった。