【完】Mrionation
「志野、魚と肉どっち派?」
「んー…お魚ですかね」
「ん、じゃまぁ…店、楽しみにしといて」
鼻歌でも歌うようにして、彼はそう話すと、慣れた手つきでスマホの画面をタップしながら、常連なんだろうお店へと予約の電話を掛けた。
「お疲れ様です、小窪です。おやっさん、今日2名なんだけどいい?うん、うん…オッケー。じゃあ…あと20分後くらいに…はーい。宜しくどーぞー…」
話している間中、彼は私のことを見つめて笑みを浮かべてる。
こうやって、他の女の子の前でも余計なフェロモンただ漏れなんだろうか…?
そう思ったら、かなり胃が痛くなった…。
広い広い彼の好意は、周りの女性皆を惑わす。
自然と滲み出るフェロモンは、一度触れたら激薬のように一瞬で、体中を巡るだろう。
だから、いつも彼の姿を目で追ってしまう。
彼を視界の端に入れて置かなければ気が済まない。
じりっと妬けるようなジェラシーを、胸の中から取り除く為に…まるで、監視するかのように…。
私はいつも、全身で彼を追い掛けるんだ。