【完】Mrionation
そんなことを、されたら…。
縋ってしまいそうになるじゃないか。
好きだという気持ちに、蓋が出来なくなるじゃないか。
駄目だ…と自分に言い聞かせても、悪い無駄足掻きで、彼のワイシャツに自分の顔を埋めてしまいそうになる。
でも、寸での所でそれを止めた。
「志野?」
「あ、いえ…ありがとう、ございます…」
「なーんてかわいー声出してんの?襲うよ?」
「止めて下さいよ、この変態」
「ちぇー」
何時だって翻弄されるのは自分の方だ。
嫌だと思うのに相手のペースに巻き込まれて、本当に駄目になる。
「小窪さんてほんとたらし…」
「んあー?失礼ねー?俺って何気に尽くす紳士よ?」
「どの口が」
「この口ー!なになに?気になる?なる?」
「ほんと、やめて」
好きだから、この距離感が心地良くて…。
だけど、もうそれだけじゃ足らなくて…。
欲しくて、堪らない。
全てを私で埋め尽くして、私の方から駄目にしてやりたい。
それは彼の前では叶わぬことだろうけど…。
だって、彼の方がなんでも上手なんだから。