【完】Mrionation
始まり
彼との出会いはどこにでもある、ありふれたもの。
同じ職場の先輩後輩…それだけ。
30歳オーバーの私より7つ年上の、友達曰く"奇跡の美魔王"と称された…確かに魅惑的な人で、社内一成績が良い誰からも信頼されるパーフェクトヒューマン。
そんな彼と私は、入社から何かと面倒を見てくれる、傍から見てもとても仲が良い先輩と後輩…そんな間柄。
皆、私達を見て和むと言う。
…だって彼は私がどんな軽口を子犬の如くきゃんきゃん叩いても、いつだって大人の余裕でなんでもかわしてくれる、兄のような存在だから。
柔らかなダークブラウンの髪はいつも綺麗にセットされていて、羨ましいほどスタイル抜群。
セクシーな目元の泣きぼくろとは真逆の、くしゃくしゃっと笑う笑顔は、思わず愛くるしい大型犬を思わせる和み系で、その陽だまりみたいな笑みに瞬殺される女子社員は少なくない。
そんな人気No.1の彼と、同じ課ではなくとも同じ社内にいて、ドキドキしない方がおかしいだろう。
でも…。
気になるけど、私なんかが手を出してはイケナイ人。
というよりも、私なんかを相手にするわけがない、そんな遠い存在。
だから、密かに気にするだけで、その時は過ごしていたんだ。