【完】Mrionation
予想通りの亀裂
一度疑心暗鬼になると、人はそれをなかなか払拭出来ない。
それくらい、彼の行動はおかしかった。
そして、私の中で壊れた感情も…深くなっている。
そんなに大したことなく退院した私は、ゆっくりゆっくり自分のペースを保つ為に生活を送っていた。
丁度、彼は本社に栄転になりそうで、地元からちょくちょく本社のある都内へ出張している状態で…。
すれ違い。
それも最悪の。
声を聞きたくても、休職中の私では忙しくしている彼のスケジュールが掴めない。
勇気を出して電話をしても、タイミング悪く留守電になってしまって、メッセージを残そうにも言葉が出て来ない。
慣れない環境で忙しくしている彼を思うと、今の私には何もすることが出来ない。
歯痒くて寂しいけれど、どこかホッとしている私がいて、それがとても不安で苦しかった。
彼の優しさは留まることを知らない。
元から博愛主義者の彼のことだし、あんなにパーフェクトな人を取り巻く女性は多いだろう。
それを思うと、胸が締め付けられるくらい気持ちが悪いけれど、物理的に遠くにいる彼に対して、「止めて」なんて言えるほど、私は可愛くなれなかった。