【完】Mrionation
反対側の温もり
家に帰って、グチャグチャの気持ちから逃げるようにして…………。
メールをしたのは、高校時代の男友達の久志(ひさし)
いつもいつもわちゃわちゃと騒いで、好きになって…私から初めて告白した、ヤツ。
付き合って、なんで別れたのかもわからないくらい、自然と親友に戻った、昔の…彼氏。
すぐに返信が来て、通話アプリのIDを教えてくれた。
少しだけ考えてから、そのIDを使って彼にアクセスすると、懐かしい声がした。
「おぅ。暁良。久しぶり」
「うん」
「なんかあった?」
「……うん」
「そっか。まぁ…こんだけ生きてりゃ色々もあるわな」
「そ、だね」
余計なことは何も言わずに、ただ独り言のように呟いてくれる彼に…涙が出てしまいそうになる。
久志は泣くなとは言わなかった。
その代わり、このまま逢おうと言ってくれた。
私は何度も頷いて、その日久志の元へと向かったんだ。
寂しさを振り切る為に…。
ただ、それだけの為に…。