【完】Mrionation
次の日。
少し痛んだ背中を擦りながら目覚めると、隣には久志のあどけない寝顔があって…。
ベッドに行く余裕もないほど、求められてしまったことに、顔が赤くなった。
でも、時計のない部屋で時間が知りたくて、スマホを起動させると、そこには何十件もの着信歴とメッセージの数々。
心配している。
迎えに行くから連絡をくれ。
誤解を解きたい。
どれも、私にとってはどこか他人事で…タップしてそれらを消すと、久志のことを起こす。
「久志、おはよ」
「んー…はよぅ…。なに?もう一回?」
「ばぁか。帰るよ。私」
「それでいいのか?」
「え?」
「や。暁良…駄目なら………」
「うん」
久志は昔から、私に甘い。
好きだとはなかなか言わないヤツだったけど、幸せだったことしか思い出せないくらい、優しいヤツ。
だから、流されるままに温もりを求めてしまったけれど…。
まだ、何もかもが終わったわけじゃない。
問題はこれからだ…。
きっと、彼は私を解放するだろう…。
もう、彼の心の中には、別の女性の影が見えるから…。
彼から別れを告げられたら、どうなるか…そんなことはまだ分からない。
でも…泣かないでいられたらいいと、そう思う。
泣いても何も解決はしないから………。