【完】Mrionation
そんな中。
私にとっての心の支えは、先輩…小窪さんの存在だった。
「志野ー…」
バリトンボイスの心地良さは、いつも私の心を堪らなくドキドキさせる。
「なんですかー?小窪さん!」
その胸の高鳴りを抑え込んで、私の近くに座った彼の方へデスクチェアをすすすーっと近付け、なるだけ元気良く返事をすると、楽しそうに笑われた。
「くくっお前って、ほんと元気ね」
「むぅ。それだけですか?言いたい事って?私吉田さんから頼まれた書類片付けないといけないんですけど?」
「んー?あぁ、吉田?じゃあ、メシ奢ってやるから頑張れよ」
ぽんぽんと自然な流れで頭を撫でられる。
どきん
突然のご飯のお誘いとその仕草に、胸が高鳴るけれど、私はふるふると首を降って彼を睨み付ける。
「こーくーぼーさんっ!何か企んでますね?」
「あー…分かった?次の会議の書類作成すんの手伝ってほしいのよー」
「んもー!そういうことだと思った!私課違いなのにっ!」
ぷくっと顔を頬を膨らませると、更に楽しそうに笑い掛けてくる彼。
「ははっそう怒るなって。可愛い顔が台無し」
「か、可愛くないですってば!!」
「な?お願い?志野だけなのよー…頼れんの」
「……うう…分かりました…でも、高いですよ?」
そんな冗談を含んだ台詞に、彼は真面目な顔になって私を見つめた。
「ん。りょーかい。期待して待ってな」