【完】Mrionation


確かに、なんだかんだと課違いだというのに、何かと理由を付けては私の傍に来て、ちょっかいを掛けてくる彼に、後輩たちや同期たちには「早く、くっついちゃえよ」なんて茶化されることも多いけど……。


いやいや、相手はどう見たって百戦錬磨の色男。


こんな…地味で彼曰く"グラマラス"体型な私に対して、恋愛感情なんて持つわけがないじゃないか…。


私はそんな風に思って溜息を吐くと、上司から下りてきた書類をまとめるべくパソコンに向かって、キーパンチをし始めた。


本音を言えば、恋愛なんて懲り懲りだ。


なんで、相手の意思に惑わされなきゃいけない?

なんで、自分のテリトリーに踏み込ませて、どうしてはいどうぞ、とわざわざパーソナルスペースに入れなきゃならない?


私は相手の都合で自分のことを振り回されるのはごめんだ。

もっと言えば、干渉されることもすることさえも嫌。


………そこまで言うと、薄情な女なのかもしれないけれど。


私は昔から、なかなか恋愛が続かない。
それがどうしてなのかは、分からないけれど…もしかしたら恋愛に対してあまり関心がないのかもしれなかった。
だから、気付くと浮気をされてしたり、自然消滅していたり……。
それらが重なって面倒臭いとも思うことしばしばで、つい受け流してしまう。


なのに…。


あの時…元カレに付けられた心の傷痕は、癒えることなく胸の中に尾を引いていて…臆病になってしまった自分がいるんだ…。


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