ようこそ異世界レストランへ~食材召喚スキルで竜騎士とモフモフ手懐けます~
見るからにジューシーそうな鶏の唐揚げを、油切りバットにひょいひょいと取り上げていく美奈は、カラカラと笑いながら言った。


「お嫁に行けそうにないのは、お父さんのせいじゃないよ。ブスなだけじゃないもの。太ったのは自分のせい。味見したり、もったいないって残り物を食べちゃうから、痩せられないのよね」


反省した端から、美奈は一個多めに揚げた唐揚げを、ひと口でパクリ。

「あっひゅい」と言って、ホクホクと実に幸せそうな笑顔を見せる。


「これだもんな」


呆れ顔の父親と、口いっぱいに唐揚げを頬張る娘に、繁蔵が温かな目を向けていた。

空になった冷酒のグラスを持ち上げた繁蔵は、お代わりを要求しながら美奈をかばう。


「大丈夫だ。美人は三日で飽きるって言うだろ。結婚相手を見てくれで決めるのは馬鹿な男よ。美奈ちゃんは良く気が利いて優しいし、愛嬌もある。大将仕込みの料理の腕も確かだ。きっとそのうち、結婚してくれっていう男が現れるさ」

「繁蔵さん、ありがとう」


たぶん、それはないと思いつつも、常連客の優しさに笑顔で応えた美奈は、冷蔵庫から一升瓶を取り出して、蓋を開ける。

カウンター越しに、繁蔵が差し出すグラスに酒を注ごうとした、その時……。

美奈は後頭部をフライパンかなにかで強打されたような激痛を感じた。

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