キリンくんはヒーローじゃない


「そんなことない。…狐井さんに男として見られないのは、この野暮ったい見た目のせいなのに、頑なに変えようとしなかった僕が悪い。急に機嫌悪くなって、困らせてごめん」


握られた掌が燃えるほど、熱い。顔がはっきりと見える分、表情からなにを伝えたいのか、わかってしまった。


「…狐井さん。僕、狐井さんの理想としている男のひとになれるように頑張るから、そしたら、僕のことも少しは見てほしい」


そんなの、手遅れだ。こんなに魅力的な黄林皐大という男に好かれて、心が動かないというほうがどうかしている。


震える喉は、うまく言葉を発してくれない。頷くだけで精一杯だ。


「絶対、斎藤月よりも狐井さんに似合う男のひとになってやる」


村人Aの仮面を剥いだ彼は、次々と砂糖漬けされた言の葉を投げて、わたしの心臓に容赦なく爆弾を落とす。


わたしにも、今すぐ顔全体が隠せるくらいの仮面をください。

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