この空の下
「先生ご存じですか？音大って凄くお金がかかるんです。医学部と同じくらい。それでも、医学部を出れば医者になって元が取れるけれど、音大はダメ。せっかく卒業しても音楽で食べていけるのはごく一部なんです」

「へえ」

だからお金持ちのお嬢さんが多いのね。

「私は何とかピアノで食べていきたくて、無理してフランスへ留学しました。実家に借金をさせてまで費用を工面して、ずっと付き合っていた恋人も捨てて」


どこか寂しそうな顔をした彩葉さん。


「でも、ちゃんとピアニストとして生活しているじゃないですか。立派です」

「そんなこと・・・食べて行くのがやっとです」


「それは私だって同じですよ」

「えっ？」


「医者なんてやってますけれど、借金だらけで、生活がやっと」

「そんな・・・」

彩葉さんは疑っている。


「実はね」
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