この空の下
「お医者さんだものね。仕事に困ることはないわね」

ちょっと肩を落とした理事長。


「隆哉は知っているの?」

うっ。

「伝えていません」


「辞めるのは、あの子のせい?」

あの子。

それって、隆哉さん?それとも彩葉さん?



「自分の意思です。隆哉さんは関係ありません」

「そう」



向かい合って座っていたソファーから立ち上がり、私の横に座りなおした理事長。

スッと、私の手を取った。


「ねえ先生。私はあなたが隆哉と一緒になってくれたらどんなに良いだろうと思っているの。隆哉は『母さんは医者だから気にいっているんだ』って言うけれど、違うのよ。あなたと一緒にいるときのあの子は普段とは別人。そんな行動に出られるのは、あなたが相手だからだと思う。できればもう少し隆哉の側にいて欲しいんだけど・・・」

「理事長」
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