この空の下
そこは、本当に田舎だった。

今のアパートから車で1時間。

小さな漁港の先にある、丘の上の診療所。


『御崎診療所』

看板にはそう書いてあった。


「みさきしんりょうじょ」

入り口のドアには、診療は月水金の午前中のみと手書きの張り紙がある。


どうやら常駐の医師はいない様子。

週に3日だけ近くの病院から応援の医師が来て、診察をしているらしい。



その時、

「あの、何か?」

後ろから声をかけられた。


「すみません。市立病院の田中優子先生からの紹介で来ました、林田羽蘭と申します」

ペコリと頭を下げる。

「ああ」

なんだか若そうな男性の声。


「とりあえず中にどうぞ」

診療所の鍵を開け中に入っていく男性に、私も続いた。
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