この空の下
「何?どうしたの?」

「お前の顔が見たくなった」

「はあ?」

ポカンと口を開けてしまった。



「嘘だよ。今日は龍之介の命日だから。一緒に飲もうと思ってね」

そう言って、紙袋を掲げて見せた。


その紙袋は空お気に入りの高級食料品店のもの。

街のスーパーで買うより2~3割も高価だけど、品質が良くて美味しい。

付き合っている頃はいつもそこで買い物をしていた。

「懐かしいだろうこの袋。お前この店の袋を大事にしててさ、大学に持って行く弁当バックにしてたもんな」

ああ、そうだった。

買い物すると街のスーパーのようなビニールの袋ではなくてちゃんとした紙袋に入れてくれて、もったいないから弁当バックに使っていた。

懐かしいな。
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