この空の下
休憩室に入ると、お玉を持った空がコンロの前に立っていた。


「これ、ブイヤベース?」

「うーん。ブイヤベースのような・・・」

あまりにいい加減に作ってあって、ブイヤベースと呼ぶのが申し訳ない。


「懐かしいな」


そう言えば、何度か作ったことがあった。

もっと海鮮が少なくて、たまにソーセージが入っていることもあったけれど。


「今日は海鮮たっぷりだから美味しいはずよ」

「へー。こっちは?」

興味津々で、クンクンと炊飯器の臭いを嗅いでいる。

「コーンご飯。この間トウモロコシをもらったの」

「良い匂いだ」


こんな時、空は本当にいい笑顔をする。

何の計算もなく、純粋な子供みたいな表情。

この顔で「大丈夫だよ」って言われると、何とかなる気がしてしまう。

長い間、私はこの顔に癒やされてきた。
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