この空の下
それにしても、施設長。
恩田隆哉さんって言ったっけ。

とても爽やかなイケメンだった。

空のような細身でメガネが似合うインテリ風ではなくて、鍛えられた細マッチョな感じ。

別に体を見たわけではないけれど、分かってしまった。


だって、

私は彼と初対面ではない。


あの夜。

人生最悪の誕生日に、ホテルで遭遇している。


ドロドロの顔で服を汚してしまった男。

誰にも見せたくない醜態を見せてしまった男。

謝った私に優しい言葉をかけるでもなく、「恐ろしい顔をしていますよ」と言い放った男。


「覚えてないみたいで良かった」

帰りの車の中で、呟いた。


とにかく、あの日の出会いはなかったことにして一生懸命に働こう。

贅沢なんて言っていられない。

まずは働かなくては。
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